第3期とちぎ自治講座 第3回講義

こうして作った自治体自律計画―新潟県津南町

開催日:2005年3月12日(土)
開催場所:宇都宮大学農学部南棟4階 3401教室
講師:新潟県津南町総務課自律推進班長 小野塚 均


はじめに
 ただ今ご紹介いただきました新潟県津南町総務課自律推進班の小野塚均です。津南町では自律計画を2年間かけて作ってきましたが、その実務の話をできればと思っております。
 私は役場に入って31年になりますが、29年間同じところにいまして、非常に特異な経歴の持ち主です。津南町は、昭和48年から農林水産省の直轄事業である国営の農地開発事業「苗場山麓開発事業」に取り組んできまして、平成14年に全て完了しました。私は、開発事業の担当をしていまして、山林原野から畑を造る、あるいは畑の区画整理をするとか田んぼの区画整理をするとか農道をつくるとかダムをつくるとか、そういう仕事をずっとしてきました。この事業が約30年間かかり、そのうちの29年間を私が担当してきました。平成14年に完工式が終わって、さてどこに異動するのかと思って期待していましたら、いきなり総務課の中に設置された自律推進室に行けと言われました。29年間現場の仕事をしていた人間がいきなりそういうところに行けと言われてもこれは大変だなぁと正直なところ思いました。おまえ以外は優秀なスタッフをつけておいたから大丈夫だ、と言われて、15年の4月1日から総務課の中の自律推進室というところで仕事をしています。
 
1 津南町の概要

 津南町は、昭和30年に6つの村が合併して誕生しました。今年は、ちょうど町制施行50周年という節目の年に当たります。人口は1万2389人、面積は170.28平方キロメートル、このうちの約65%が山林です。65歳以上の高齢化率は32.2%で年々1%ずつくらい増えていきます。高齢者の人口は、現在の推計でいきますと17年あたりがピークかなと思っています。日本有数の豪雪地帯であり、中山間地域の典型的な農林業の町と言えます。
 財政状況ですが、14年度の決算を見ますと、町税が12億8千万円で約20%、地方交付税が29億6千万円で約45%、あと補助金、地方債等で歳入の合計は65億8千万円くらいです。歳出の方は、人件費が13億円で20%、公債費、物件費、そして普通建設事業費が約10億円で、歳出の合計が約63億円の町です。標準財政規模で言いますと44億円から45億円の町です。
 次に、地方交付税ですが、津南町の場合は特に45%も地方交付税に頼っているということで、地方交付税の動向が町づくりの重要なカギを握ってくると考えています。全国の市町村数は3200と書いてありますが、今現在は2800位になっています。来年の4月以降になると2000を切るのではないかと言われています。東京の23区のような非常に大きな区とか100万人以上の市とかがあります。一方で数千人とか場合によっては数百人という町村もあります。そういう、いろいろな町村がそれぞれに行政サービスを行っています。本来、行政サービスはその地域から徴収される税金で賄われるというのが良いのですが、どう考えても、今度政令市になる80万人の新潟市と1万2千人の津南町では全く財政力が違いますし、当然、税収も違ってきます。こういう格差を国税を再配分して何処でも一定の行政サービスが受けられるようにしたのが地方交付税です。普通交付税と特別交付税の二種類があります。普通交付税が全体の94%、特別交付税が6%となっています。特別交付税は特別なことに対応しますので、昨年ありました新潟の中越大地震というような大震災や水害などの特別な場合にこの6%から配分されます。
 財政指標ですが、財政力指数は0.302で財政力の弱い町です。経常収支比率は78.4、それから起債制限比率は4.3ということで、この起債制限比率については新潟県でも相当低い部類、ベスト5くらいに入る水準です。公債費負担比率は15.3、これは 15%を超えると警戒ライン、20%を超えると危険ラインと言われていますが、まあ財政基盤が弱い割には比較的健全な財政運営しているかなと思っています。割合に借金も少ないです。これは歴代の町長がそうだったのですが、何かをやる場合ある程度基金の積み立てをして対応して来ました。100%借金をするよりも半分なり3分の2なり、あるいはかなりの額の積み立てをしながら大規模な事業をやってきたことが、ここにきて起債制限比率が低いとか公債費負担比率が低いとかということに繋がってきているのかなと思っております。 

2 自律への決断

(1) 今なぜ合併か
 自律への決断ということですが、まず今なぜ合併かということです。
これは私がこういう言い方をするとお前ちょっと考えがおかしいじゃないかと言われるかもしれませんが、当初は地方分権の受け皿、要するに分権していくためには財政基盤がしっかりしている市町村でなければいろいろな事業を下ろしてもできないと、そういう意味で地方分権の受け皿になるための合併だということで進んで来たのですが、どうも最近その辺がおかしいじゃないか、国の財政破たんを助けるためじゃないかという穿った見方をしています。国の借金は今538兆円ですか、都道府県も205兆円ありますからこれを加えると743兆円、非常にすごい額でして、一人当たり606万円になります。私の家は5人家族ですから3千万円くらいの借金になります。
 そんな中で、地方交付税が減らされる、合併しないと地方交付税が減らされるということが言われています。減らされる理由は、一つは段階補正が無くなるということです。今は6千人とか8千人とかそういう小さな町村には余計に交付税が配分される仕組みになっています。それが1万人になる。そうすると3千人だとか6千人だとか1万人より人口の少ない町村は交付税が減らされる、これは大変だということで合併に走っているところが多いと思います。もう一つは合併特例債です。これはアメですね。毒アメだと言っている人もいますが、要はアメです。それから地方交付税の額の算定特例がある。この二つの特典があるうちに合併しなければという市町村が非常に多いように思います。ただ、この合併特例債も全額みてくれるわけではありませんので、5%は一般財源が必要ですし、残りの95%の7割しか交付税で見てくれません、単純にいっても3分の1は借金だということです。それから交付税の算定特例、これも今の額を保障してくれるのではなくて算定の仕方を保障しているだけですから、当然、人口等が減ってくれば交付税自体が減ってくるという状況になります。
このような中で、合併というのはやはり強要されるものではないだろうと、住民の主体的な意志によって判断するべきだろうという考え方です。合併はいつでもできます。じっくり考えた後でいいじゃないかと思います。津南町も将来とも決して合併しない、合併を否定しているということではありませんが、やはりこういう状況を見ると、そんなに急いでする必要は無いのではないかと思っています。
 
(2) 地方分権推進一括法
地方分権推進一括法ですが、平成12年の4月に施行されて地方分権の推進をしよう、あるいは少子高齢化の中で国と地方の財政状況が悪くなってきている、それをしっかりやっていかなければならないというのが地方分権一括推進法です。やはり一番は国と地方の関係です。今まで上下主従の関係と言われていますが、これをとにかく対等協力の関係にするということです。これは、分権されていっても実質的にはいつになったら対等協力の関係になるのかというのは疑問ではありますが、そういう趣旨で分権一括法が進められてきているということです。
 その中で、行政の効率化とかあるいはサービス水準の維持向上ということをするために市町村合併ということが言われています。あとは合併特例債ですが、これは先程申しあげました。合併するところは、おそらく財政計画は10年くらいしか立てていないところがほとんどだと思います。10年というのは合併特例債で非常に景気もいいわけですから割合財政規模も大きくなります。それが10年以降になると交付税の算定特例もなくなってきますから、段階的に減ってくる、さらに合併特例債の償還が始まってきて非常に厳しくなってきます。10年ぐらい先までしか財政の見通しを立てていないという市町村がほとんどかなと思います。

(3) 地方交付税の算定特例
 地方交付税の算定特例ですが、合併して10年間は今までと同じ算定の仕方を補償しますということです。図では10年間は減らないようになっていますけれど、人口が減ってくると減ってきます。人口が減らなければそのままですけれども。10年以降はガタガタガタと減ってきて、一緒になった時の交付税の算定になるのが5年後ですから15年後にはこの水準になるということです。

(4) 市町村数の変遷
 市町村数の変遷です。明治の大合併、昭和の大合併、平成の大合併ということですが、明治の大合併は人口300人から500人で行こうということでスタートしていますし、市制町村制で市町村の数は1万5000くらいになりました。昭和の合併は中学校です。中学校一校を何とか管理できるようなエリアあるいは人口にしようということで合併が進められました。そこで、平成の大合併はといいますと、どうもその辺の大義名分が見えてきません。国では1000位というようなことを言っていますが、今年の1月で2863、最終的に2000を切るかなというような状況です。とても国が目指している1000には程遠い状況です。今回の合併の状況を見ていますと、非常に両極端になってきています。小さいところでも自立で頑張るという自治体もありますし、あるいは中核市・政令市だと大きい自治体に向かっていくという両極端に分かれてきているなと思っています。
 
(5) 津南町の合併の取り組みと経過
 ここから津南町の合併への取り組みについてお話をしたいと思います。新潟県は、前の平山知事さんが合併に非常に積極的に取り組んで来ました。平成13年2月に、県が21の合併パターンを提示しました。津南町としても提示された以上、合併について研究しなければならないということで、庁舎内に合併問題研究会とワーキンググループを設置しました。当然、町議会も合併問題特別委員会を設置しました。
津南町も十日町市という雪まつりと着物で有名な市がありますが、十日町市を中心にした6市町村での合併というのが県のパターンでした。その合併でいきますと津南町は一番西の端になります。津南町の隣は長野県の栄村ですから、十日町市を中心にした合併となると非常に遠くなります。津南町もその合併についていろいろ模索をしてきました。合併対象の6市町村、その前に十日町を除いて5市町村で研究会をやり、あるいは津南町、隣の中里村、川西町の3つでやるとかいろいろ研究して来ました。最終的には十日町も含めて合併研究会を立ち上げました。
 そのような中で、平成 14年1月と11月の2回、町づくり懇談会を実施しました。これは全集落を対象にして、34、35会場でやりました。1回目は、6市町村の比較です。要するにサービス水準はどうなのか、国保料はどうなのかとか、あるいは水道料はどうだとか、6市町村並べて比較しました。今行政はこうなっていますというものを1回目で説明して、2回目は、じゃあ合併したらどういうメリットがあるかデメリットは何か、合併しなかったらどういうメリットとデメリットがあるかということを説明しました。集まってくれた人が3割位で、あとの7割は来ていませんので、2回ともそれぞれの地区で出た意見、要望とかを全部集約して全戸に配布をしました。
 それを受けて14年12月13日に18歳以上の全町民を対象にしてアンケート調査を実施しました。回収率が約89%でした。普通は、葉書なり封書を出して返してくださいというとおそらく1割から2割の回収率です。それで、今回は職員が配布をして回収をするやり方をしました。ただし、誘導尋問になると困りますから、回収する時はアンケートと一緒に渡しておいた封筒の中に入れておいてもらい、それを職員が回収するというやり方をしましたので、9割近い回収率になりました。それを開封しましたら合併反対、どちらかというと反対が57%、賛成、どちらかというと賛成が23%ということでダブルスコア以上でした。これは民意を尊重しなければならないということで、この時点で合併はしないということを決めました。実は、十日町圏域では任意の合併協議会を立ち上げようとしていましたが、津南町はとにかくアンケートの結果が出るまで待ってもらい、最終的にこういう結果になりましたので、15年1月16日に合併はしない、これを新たな町づくりの機会と位置づけました。
この間、とにかく議会と一緒にやってきました。比較的町の当局は合併賛成、町の議会は反対だとか、議会は合併賛成だが町の当局はどうのこうのとかいろいろありますが、津南町の場合はとにかく議会とともに一緒に取り組んで来ました。最終的に1月16日に合併しないと言う結論を議会とともに出しました。
 それで、15年4月1日に自律推進室を設置をしました。総務課長、総務課長補佐が兼務で専任の職員を3人張り付けていただき、スタートしました。

(6) 津南町は何故自律を選択したか
 津南町が何故自律を選択したかということですが、いろいろ考えてみましたが5つあるかなと思います。
一つは、さっきちょっとお話をしましたが、十日町圏域の6市町村と合併をしてしまうと非常に役場が遠くなるということです。いや支所があるからいいんだ、車でいけば20分、25分で行くじゃないかということですが、津南町自体が170平方キロメートルもありますから、今でも役場に来るまでに50分くらいかかる所がありますし、それがもっとかかるじゃないか一時間半くらいかかるじゃないかということで、やはり遠くなるということがありました。
それから、昭和30年に合併しましたから50年経ってようやく津南町としての一体感が出て来た、今までは6か村が合併しましたのでいろいろありました。例えば気質です、地域ごとに気質が違うとかというのがずっとありました。ようやく50年経って津南町で何かやろうというような一体感が出て来たのかなと思っています。
そして、津南町の場合は農業基盤がほとんど整備をされています。これから農業を中心にした町づくりをしようという矢先の合併の話が出てきました。
 もう一つは、あまり財源がない割には周辺の市町村に比べて比較的福祉サービスの水準が高いです。
それからもう一つは、どういうわけか農協も森林組合もまだ合併していません、そうであれば町と農協と森林組合で一緒になって町づくりが出来ます。それで町民は合併を選択しなかったのかなと思っています。

(7) 覚悟を決めて合併しない町
 「覚悟を決めて合併しない町」というのはうちの町長がよく言っている言葉ですが、「農を以て、自律をめざす町」という本を町長が出しましたが、そのなかでも言っています「国や県が支援してくれる合併の方が楽だよ」と、それは確かにそうだと思います。でも、それでは誇りある町づくりは出来ないということです。これは口で言うのは簡単ですが、生意気なこと言っているなと県の皆さん方には思われているかもしれませんが、やはり誇りある町をつくるには簡単に合併しちゃ駄目だよということです。そのかわり大変です。自らも汗をかき、血を流すような覚悟でなければ駄目です。

3 新たな町づくりへの取り組み

 次に、新たな町づくりへの取り組みについてですが、平成15年1月16日に議会とともに自律宣言をしましたが、その日の夕方150名の職員全員を集めて、町長は、「とにかく津南町は自律する。自律を新しい町づくりの機会ととらえてやる。でもそんなに生易しいものでない。汗もかき血も流すくらいでなければ実現出来ない。それくらいの覚悟で取り組んでほしい、職員もその気で頑張ってくれ。」と言いました。これが新しい町づくりのスタートでした。町長から私たち三人に言われたのが、2年間の猶予をやる。2年間で自律計画を作れということでした。

(1) 重点的に取り組んだこと
 2年間時間で具体的な町づくり計画を作れと言われても、私も29年間現場の人間でしたから、さて何から始めようかなと悩みました。最初は事務事業の見直し、二つ目は予算税財政の見直し、要は将来推計です。財政的にやって行けるという裏付けがなければ、簡単に自律なんて言っても駄目だよと言うことです。三つ目は、具体的な財政の裏付けのある町づくり計画を作ること。本来は総合振興計画のようですが、これは総花的で非常に広げてしまいます。そうではなくもっと具体的に財源の裏付けのある計画を作らなければなりません。4つ目は、人事機構の見直しで、とにかくこの4項目に重点的に取り組みました。
事務事業の見直しからといっても、何から手をつけていいのかわからな中で、あちこちからいろいろ情報を集めて参考にしたのは福島県の三春町というところです。その町は、事務事業の見直しをかなり前からやっていて、非常によい成果が出ているからそこに聞いてみろということで、三春町からいろいろ情報を仕入れて、点検表を作って、職員が自分のやっている事務事業全ての見直しするというところから始めました。
次に、予算、税財政の見直しですが、津南町は20年先まで考えました。これも3年先5年先でさえわからないものを何で20年先まで考えるのだという意見もありますが、やはり3年や5年で駄目でしたと言うわけにはいきません。ある程度長期にわたる財政の見通しというもの立てる必要があるということで20年先の見通しをたてました。
次に、分野別自律推進チームによる具体的な町づくりについてです。全職員を11のチームに分けて、町づくりをいろいろと検討してきました。
最後に機構改革についてですが、昨年の10月1日に機構改革を行いました。

(2)  自律に向けた町づくりの目標と理念
 自律に向けた町づくりの目標と理念を4項目揚げました。一つは、住民が大切にされる町、二つ目は、住民の暮らしを支える町、実はこれが大変なんです。財政が限られている中で住民の暮らしを支える町と言うのはなかなか難しいですが、とにかく住民の暮らしにかかわる基本的なサービス水準は維持していこうという考え方です。見直しの中には、補助金の見直しもあります。補助金の削減も当然関わりがありますが、直接住民の暮らしに関わるものは今の水準を維持しようということです。
 三つ目は、住民参加と協働の町です。これがやはり、自律して行く上では一つのキーポイントになるのかなと思います。住民が行政サービスの受け手ということではなく、住民とともに町づくりをして行く、住民も参加するという意識、これをどうやって育てていくかというのがこれからの課題です。住民参加と協働の町、こんな町を作ろうと考えています。
 四つ目は、町行政の原点です。役場は住民のためにあるのであって、住民は役場のためにいるのではありません。これは当たり前のことですが、再認識をする、要は職員の意識改革、あるいは住民の立場に立った組織改革をやりましょうということです。
 このほかに、町長が常々弱者優先僻地優先ということを言っています。これも一つの共通の認識ということで、四項目の目標と理念を掲げながら町づくりをして行こうということです。

(3) 全事務事業の見直し
 具体的な事務事業の見直しについて説明をします。最初に私どもが4月に異動になって最初に手がけました。さて、どうやろうかと一ヶ月位いろいろと資料収集し、どんなふうにやろうか考えました。そして、4月の下旬に職員を集めてこのように事務事業の見直しをやるので皆さんよろしくお願いしますよという話をしました。平成14年度事務事業の点検表と事務事業項目別点検評価チェック表というものを作り、職員にこれを全部書かせました。様式を作るのは簡単ですが、これを埋めるのは非常に大変です。このように書くのだよという例を示して、職員に書いてもらいました。自分で点検表、評価表に基づいて評価します(第1次評価)。それを担当課でまた評価をする(第2次評価)課の職員が集まって再度見直しを行なうということです。職員が評価するのに6月上旬まで約一カ月、40日位かかりました。その後、課から出てきたのが6月末くらいです。
 次は、自律推進室がヒアリングをしました。私もそうだったのですが農業関係の仕事はある程度わかりますが、それ以外の仕事は全く分かりませんほかの二人の職員も、自分がやったことのある仕事はわかりますがそれ以外のことはわかりませんので、係単位にヒアリングを行いました。これも7月の中旬から8月の中旬くらいまで約一カ月かかりました。ヒアリング後自律推進室でまた評価を行いました(第3次評価)。
それをまた担当課に戻して、担当課で自律推進室ではこういう考えでこういう評価をしたのでこれでいいかどうか、また評価してもらいました(第4次評価)これがだいたい9月の上旬くらいでした。ここまでは、自分の課の話ですからどちらかというと身内の評価です。最後に、自律推進リーダー、これは各課の代表者1名、全部で13課ありますので、13名と自律推進室で一項目ずつ全部評価をやり直しました(第5次評価)。ここからは自分の課以外の人がいっぱいいます。12人は自分の課以外の人ですから、要は人のやっていることですから好きなように言えます。そんなことでいいのかとか、もっとこんなふうにしなければならないなど好きなことを議論しました。私は非常に良かったかなと思っています。
 この会議は延8日間と非常に時間がかかりました。全部で1147の事務事業がありましたので、若干ダブっているようなものもありますが、どこの町村でも恐らく1000以上の事務事業はあると思います。それを全部5段階の評価をしました。資料に事務事業点検総括表というのがありますが、表紙には継続、要改善、縮小、廃止、その他と入っています。その他というのは保育所の関係とか病院関係ですから継続というところに入れていいです。これを入れますと継続するのは534、改善するものは339、縮小するのは129、廃止するのは145と、このように全部区分をしました。
 そして、それぞれの項目ごとに見直しの方針がでています。例えば人件費であれば、職員が議会の権能にかかわることに踏み込んでしまったのですが、議会の定員を何人にするという提言をしましたし、当然農業委員の定数、それから助役が収入役を兼務する案、一般職員も削減して行くということです。物件費では、旅費規定の見直し、県内の日当は昼食代みたいなものですから無しということになります。また、交際費だとか需用費を削減しようとか民間委託もやろうということになります。あと補助費、これも定額補助がほとんどです。農協だとか商工会だとか土地改良だとか公共的な団体については2ヵ年でゼロにしようということを打ち出しました。相当抵抗がありました。16年度の事業から削り始めたのですが、本当は16年度で半分にしなければいけないのですが、半分に出来なかったところもありますし、17年度にはゼロにしなければならないのですが商工会が相当抵抗しています。商工会の場合は性格が違いまして、簡単に農協、土地改良と一律でいいかどうかという議論はあるのですが、あとは定額補助から事業費補助に改めようということです。それぞれの団体の決算書を全部見て食料費等に相当使用している団体は、バッサリ切りましたし、定額補助から事業費補助に変える。うちの団体ではこういう事業をやります、ついては町からも少し助成してくれないかというように改めよう、また、事業年度も3年なり5年なり区切って、ある程度成果を検証していこうということです。

(4) 予算と税財政の見直し
 次に、予算と税財政の見直しです。要は収入の見通しです。これがキーポイントになります。町税がどうなって行くのか。これは単なる推計ではなく、このまま人口が推移して行くと納税義務者が何人くらいになって行く、何人くらいでいくら納税するからいくらになるというような細かな推計をしました。税源移譲の絡みで所得譲与税を入れたり、三位一体の改革、昨年、今年、来年までの影響額も加味しよう、それから地方交付税、これがキーを握っていますので交付税の推計もきっちとやりました。交付税の項目は全部で114項目くらいありますが、それを全部、人口推計などを基にしてたとえば子供の数がどうなるか学校の数はどうなっていくなど1年1年全部入れて計算をしました。これを20年先までやりましたから、簡単に言うと20年分の予算編成をやったような感じになります。
 そんなに先まで細かく試算をして意味があるのかという人もいるかもしれませんが、うちの町としては単なる傾向として押さえたくなかったというのがあります。しっかりと財源を見極め緻密に積み上げたということです。これは予算科目で款、項、目、節とありますが、要は細目ごとに節単位に積み上げたということです。ですから、職員に配ったものは1センチくらいの報告書ですが、そのバックデータは約1000ページ位あります。それはそうです20年分の予算編成をやるのですから、予算書だけでも300ページ位あります。
当初の試算では20%圧縮をしようと考えていました。というのは交付税がどのようになっていくか全く先行きが読めませんでした。交付税が減らされても何とかやって行けるという試算をしなければなりませんので、その時は20%減らされてもやっていけるように交付税の算定を厳しく見積もりをしました。
 20年先までの歳入・歳出の推移を見ますと、17年くらいまでは厳しい見通しで、平成17年度では3千万円くらいの財調をとり崩さなければならないというような収支です。ただ、それ以降は事務事業の見直しや職員数が減って行くということを加味すると、今の試算ではかなり余剰金がでてきます。この余剰金を使って新たな町づくりをしようという考え方です。
最初、職員に見直しをしてほしいと指示するとどうしても萎縮してしまいます。見直しイコール縮小なってしまいます。私はそうじゃない、無駄なもの不要不急なものを先送りする見直しをして財源を生み出し、これを次の町づくりの財源にしようと、これは積極的な見直しだと職員に言いました。

(5) 分野別自律推進チームによる具体的な町づくりの検討、構築
 次は、分野別自律推進チームによる具体的な町づくりの検討、構築についてです。まず11の分野別自立推進チームを立ち上げました。11のチームを立ち上げたのですが、似たようなチームもありましたので、本当は2つ3つ減らしてもいいかなというのはあります。ただ、うちの町の職員は150人位いますが、だいたい1チーム15人位にしたいというのが頭にありました。なぜ15人かといいますと、会議に出てきて発言をしないで帰るということがないようにしたい、お地蔵さんでいては困るという考え方です。リーダーにはなるべく全員から話をしてもらうような会議の進め方をしてくれと話をしました。また、毎回15人が出られるわけではありませんから、やはり3人なり5人なりが休んだとしても10人位ならばある程度会議が出来ますが、これが極端に少なくなると会議が出来ませんから、そういうことも考えて1チームは15人位にしたいというイメージを持っていました。
 次にチーム編成ですが、職員に第三希望まで取りました。私どもは、希望を取った時にどういう構成になるか、要は自分が今やっている仕事や経験して来たような仕事の分野に行くのか、あるいは全く経験したことのないような分野に行くのかと心配しました。実際、蓋を開けてみましたら、まあうまくバラけているというか、11のチームの中に2人くらいはその道のプロパーといいますかある程度精通した人がいました。いないと会議は進みませんので、その辺がうまくバランスが取れました。ほとんどの職員が第3希望までに振り分けられました。同じような希望があった場合は若手を優先にしてチーム編成をしました。
 このチーム編成には課長級を外しました。担当課長がチーム内にいて、そんなこと出来ないと言われるとそれで議論が終わってしまいます。あるいは町長がこう考えているから駄目だと言って終わってしまいます。ですから、自由に発言できるように、課長さんは脇に置いてオブザーバー的な立場で参加していただきました。最初は、今どんなことをやっているのかということを勉強しなければなりません。勉強会にはやはり課長さんを呼んで、どんなことやっているか説明をしてもらったり、質問をしたりしました。課長さん方にとっては議会の質問とは違いますから、そういう面では課長もオブザーバー的な立場として自分のやっている仕事については相当勉強して説明してくれました。
 チーム分けをした後、職員にこういうふうに会議を進めてくれという話をしましたら、職員から質問が出ました。一つは、自律計画は議会の議決がいらないが、総合振興計画は議会の議決がいるけれども、それとの整合性をどうするのかということです。それについては、無視しろとは言わないが、総合振興計画にこだわる必要はないというふうに話しました。というのは、総合振興計画にこだわってしまうと新たな町づくりの発想なんてでてこないからです。もう一つは、町長の意向はどうするのかという質問です。職員も敏感ですから町長がこうしたい、ああしたいというのはある程度分かっています。新たな町づくりを限られた財源の中でやっていくとなると、今町長がやっているものを否定するようなものも出てきます。そういう場合はどうするのかという質問がありました。それについては一切考慮しなくてもいい、要するに好きに考えてくれと、町長の意向がどうだなんて話をいちいちしていたら新しい町づくりの発想なんて全く出てこないからです。町長の意向なんて考えなくていい自由に考えてくれといいました。
 それで12月に中間報告を出したのですが、実は町長の意向と反するものがいくつかありました。町長にこれで出しますと報告書を持っていくと、まあお前たちが考えたのだから出してもいいやということで、そのまま出しました。そうすると、町長の言っていることと違うじゃないか、町長の方針と違うじゃないという話がありまして、若干物議をかもした項目もありましたが、それもひとつの問題提起でもありますし、それもいいじゃないかと町長も言っていました。
 どんな体制で作業を進めたかということですが、生活環境、定住基盤、農林水産、商工雇用とか観光リゾートなど11の分野別自律推進チームがあります。このチームが大体週1回くらい勤務時間外の5時以降2時間から2時間半くらい会議室に集まって会議をやります。流れとしては、チームで検討したことを最終的にはひとつの町の方向性にしなければなりませんから、それぞれのリーダー、サブリーダーと一緒に出て来た内容を精査して取りまとめていくという流れです。
 チームでは、どんなことを検討したらいいのか全く分からないので、検討する項目は自律推進室で考えました。このチームはだいたいこういうものを中心に議論をしてくれと自律推進室で考えた項目を渡しました。例えば生活環境チームであれば、克雪、ごみ、し尿、交通安全等の内容にもう少し追加する項目、削除する項目がないかチームで検討してもらいました。
 全部で11チームありますので2から3チームくらい毎日会議をしています。週1回午後5時から7時ないし7時半くらいまでやっています。チームの中には保育士さんも40人くらい入っています。保育士さんは、居残り保育もありますし家に帰って夕飯の支度もしなければならないという一番主婦として大事な時間で果たして出席できるのがどうか心配しました。出席率は8割位で、非常に高かったです。どっちかというと保育士さんの方が一般職の人よりも出席率が高かったです。居残り保育とかもありますが6時とか6時半になっても出てきてくれました。なぜ、保育士さんの出席率が高いのか考えてみますと保育士さんは専門職ですから町づくりとかあまり経験したことがありませんので、自分たちも携わって町づくりの計画を作れるという喜びがあったのかなというふうに思います。
 さっきの事務事業の見直しも通常勤務以外にやりました。これも超勤の請求はありませんでした。自分たちの町の将来を考えるということで、職員には超勤無しで頑張ってもらいました。チームは一週間に1回ですが、自律推進室の3人は分かれてそれぞれチームの会議にほとんど毎日出席しました。空いている日が木曜日しかありませんでした。その空いている木曜日に別の会議が入ってきたりして、ほとんど昨年の10月の末からまともに家に帰って夕飯を食べなかったという状況でした。職員に超勤なしで頑張れと言いましたので私たちもやらなければならないということで連日頑張りました。
 
・中間報告を全戸配布、集落座談会
 4月20日に職員が取りまとめたものを中間報告として町民に出したものです。
 生活環境チームではキャッチフレーズを作って目標を立ててこんなようなことを議論しましたという内容です。

 もう少し細かく集落内の除雪であればどうだとか冬季の保安要員はどうだとかいうことを書いてあります。これは町民向けです。こういうものを4月20日に配布しました。
ですから15年12月に第1回中間報告をして町民の皆さんに配りましたし、昨年の4月20日に今度は町づくり、こんな町にしたいというたたき台を全戸に配布をしました。
 これは作業の流れを書いてあります。11チームを10月の下旬に立ち上げてそれぞれチームで会議をやってきましたが、やはり11月と12月はほとんど勉強会です。生活環境であれば今どんなことをやっているか、ごみはどうなっているのかなどの勉強会です。それで1月から3月にかけてようやくどういう町にしようかという検討をしてきました。ここまでで延べ192回です。一チームでだいたい17回か18回やっていいます。それぞれのチームから出てきたものをさっき申しあげました調整会議で検討しました。その後4月20日に中間報告を全戸に配布しました。
 今までは行政主体です。最初、2年間で町づくり計画を作れと言われましたので、本来なら町民の皆さんと一緒にやるのが一番いいのですが、職員でも2ヶ月くらい勉強しなければならないのですから、町民の皆さんと一緒にやったのでは、とても間に合いません。3年から5年くらいかかってもいいよというのであればそれはまた別ですが、そういうわけにはいきませんので、それで考え方として職員がまずたたき台を作り、たたき台を町民の皆さんに示して、その後説明会をしたり各種団体と協議をしたりして、最後に町民代表を交えて町づくりの骨格を作ろうと考えました。
 4月20日に中間報告を作って町民に配布した後、集落懇談会を夜32会場でやりました。6月7日から7月2日まで約一ヶ月、職員だけでやりました。町長・助役は出席していません。チームリーダー、サブリーダー、自律推進室を二班に分けて、夜8時から10時まで説明会を開催しました。相当、何か言われるかと思っていましたが職員だけですから町長、助役がいるときとは別でそう厳しくは言われなかったかなぁという気がします。とにかく、職員が主体になって集落懇談会をやりました。ちょっと残念だったのは、出席率が低いことでした。だいたいこういう会議はその家の主人しか出て来ませんので、1軒1人としても1割位でしょうか。中間報告を全戸配布しましたが、これに対しても反応が全くありませんでした。もう少し何か返ってくるかなと期待していましたが、反応がありませんでした。これからの町づくりについて考えなければならない部分です。集落懇談会をやりながら各種団体と、例えばスポーツ団体とか婦人会とか商工会とか土地改良とか農協とかと協議を行いました。
8月の上旬に町づくり検討委員、55名公募しました。11チームありますから1チーム5人ずつで55名です。公募しましたが、集まったのは13人でした。なかなか当町のような田舎では公募しても集まらないかなというのは予想していましたが、13人というのはちょっと少ないと思いました。残りの42人はそれぞれのチームから推薦をしてもらい、それぞれのチームに5名ずつ入ってもらいました。8月の5日に初会合を行いました。職員が作ったたたき台をもとにして検討委員の皆様と一緒にどういう町にしようかという議論を行ないました。これも8月、9月の2カ月間はもっぱら行政批判で、町づくりの議論はほとんど出来ませんでした。あれが駄目だこれが駄目だという話ばかりでなかなか具体的な町づくりの議論は出来ませんでした。本格的に議論に入ったのが10月でした。 10、11、12月と議論が白熱してきました。途中10月に地震があってブランクがありましたので12月に出す予定の中間報告を3月に伸ばして、12月まで目一杯議論してもらいました。町民代表の方は職員みたいに毎週というわけにはいきませんから、月に2回とか3回とか、チームによっては毎週やったところもありますが、1チームだいたい10回くらい町づくりの議論をしてもらいました。
その後1月になって新たな町づくり政策の調整をしなければなりません。事業費の問題がありますから、最初にリーダーだけで議論をしました。これは4回くらいやりました。1月の後半に自律計画の調整会議を開催しました。リーダー、サブリーダー、町民代表、一チーム3名ずつ33人、これに自律推進室の3人を加えて36人で、この事業は全部実施しようとか、もう少し少なくしようとか、少し先送りしようとか調整して、先ほど説明した余剰財源をつかって財源に裏づけされた新たな町づくり計画案が出来上がりました。当然、課長会議、町長説明、議会説明をやり新生津南町自律に向けた町づくり報告書が完成しました。議員さんには先月25日にリーダーが一方的に説明しただけですので、議員の皆さんは面白くなくて、質問の機会を与えろということで、実は昨日の午後1時半から4時くらいまで細かなことを質問されてそれに答えてきました。

(6) 行政組織機構の見直し
 先程、機構改革をやったという話をしましたが、昨年の10月1日に今までの課長、課長補佐、係長、係員というのをやめて課長、班長、班員にして組織のフラット化とグループ制に移行しました。この狙いは、これから職員も減らして行かなければならない、あるいは新たな行政課題が出てきても職員を増やすというわけにはいきません。また、係制というのはどうもセクト的になり自分のところだけで固まってしまいますので、隣が忙しくてもなかなかそこを手伝おうかという声が出せません。気持ちがあっても出せないというのがあります。片やこっちの係はいつまでも残業をしている。こういうのをとにかくなくそうと考え、2つか3つの係を合わせて一つのグループにしました。名称は色々考えたのですが、班にして班長と班員にしました。大体ひとつの班が平均すると8人から10人です。とにかく人員配置を弾力的に行い効率よく事務を執行しようということです。
 これがいかに機能するためには班長に掛かっています。私も班長ですので偉そうなことは言えませんが、班長が仕事を見ながらどうやって班員、職員を動かしていけるかということです。その辺がやはりこの機構改革が成功するか今までと同じで終わってしまうかの分かれ目かなと思います。10月からですから約半年たちました。やっぱり見ているとイマイチかな・・・という気がします。新年度から班長会議を頻繁にやって意識改革をしっかりと植え付けて、とにかくしっかりと機能しないとやった価値がありません。
 今まで14課35係あったのですが、これを8課17班に再編しました。14人いた課長は8人になって5人が班長になりました。これは助役と総務課長がやったのですが、嫌な思いをしたと思います。別に給料を下げるということではなくても、やはり課長さんが課長でなくなるというのは職員としては気持ちが分かるような気がします。

4 町づくりをどう進めるか

 次に町づくりですが、どのような町にしていくかという話になりますが、やはり津南町は昭和30年の合併以来、町是が「農を以て立町の基と為す」ということでやってきました。それで歴代の町長さん方をはじめ先人先輩の方々は農業立町、町の基幹産業は農業だということで取り組んで来ました。そういう意味では先程申しあげた国営の農地開発事業にいち早く取り組みました。総事業費は577億円かかりました。農林水産省の直轄事業ですから町の負担は少ないですが、それでも20億円位の町負担をしています。この事業によって農道も整備されましたし、ダムも作れたし、水田・畑の基盤整備も出来ました。これで20億円の負担であれば安いものだと思っています。町の負担分が年7800万円くらいずつ償還をしています。平成14年に国営事業が完了したときに役場庁舎の隣に大きな記念碑を作りました。とにかくこれを町のシンボルにして町づくりをしていこうと考えています。
 国営事業の概要ですが、延べ2000ヘクタール以上の基盤整備をやり、受益者も2329戸です。津南町の農地のほとんどがこの国営事業の中に入っているという状況です。
 専兼別農家数ですが、専業農家が増えてきています。一種兼が減ってきて専業になる人と二種兼になる人に分かれてきています。
 経営規模別に見ますと、大規模な農家が増えてきています。年度別の販売額で見てみますと、稲作はおかげさまで日本一の魚沼コシヒカリということで高い評価を得ています。販売額で約20億円から25億円です。畑作は約15億円前後です。主なものは、アスパラガス、雪味人参、スイートコーン、キャベツ、大根それから近年カサブランカの評判が良くて5億円から6億円の売り上げがあります。東京の大田市場では評判がよくてセリにかかる前に全部売れてしまいます。養蚕はゼロです。畜産は酪農、和牛、養豚とあります。林業この中にはキノコも入っていますが、約5億円位です。
 農業振興策です。農業施設としては、予冷庫、保冷庫、堆肥センター、ニンジンの選果場、炭化施設、そして農業公社があります。新規就農者はほとんどがIターンで、今20人います。結構、関東圏から津南町に来て農業をやろうという方が多いです。
 農業が基幹産業だという話をしましたが、やはりこれからは農業と観光を結び付けていく必要があるだろうと、要は観光産業の育成、これが大事だと思っています。でどうやって増やすかということですが、体験型の観光に力を入れるということです。農地もかなりありますし、農と縄文の体験館「なじょもん」という施設を昨年作りました。津南町は縄文遺跡が多く出現をする町で、この「なじょうもん」にきていただくと縄文の体験ができるということです。今は津南町に来ている観光客は延べで60万人くらいですが、これを80万人くらいに持っていきたいということです。火炎型土器、こんな立派なものが出ます。十日町では国宝に指定されたのですが十日町よりも大きいし数もいっぱいありますし立派なものがあります。
グリーンピアですが、これも今年の10月に津南町が取得するということで話を進めています。公設民営です。津南町が取得をして経営は民間に任せるということです。

5 自律に向けて残された課題

最後に、残された課題です。これは一般的に言われていることですが、自治の本質とか地方が果たして来た役割というものを忘れてはいけないということです。やはり地方交付税の財源保障機能、財政調整機能これは堅持していく必要があります。今税源移譲、補助金を廃止して税源を移譲することにしていますが、これでよくなるのは都市部だけです、それ以外のところはそれほど税源が移譲されません。そうなるとなおさら地域間格差が出てきます。そういう面で私は、交付税制度は非常によい制度だと思いますので、堅持していかなければいけないと思っています。     
  

6 新生津南町自律に向けた町づくり報告書

 次に、町づくりの報告書について説明します。これにつきましては、1ページ目には町づくりの基本構想、どんな町にするのかということが書いてあります。2ページ目は町づくりの基本計画が書いてあります。この二ページ目を見てどんな町になるかというのが一目で分かるようにと思って作成しましたが、なかなかうまく表現出来なくて、このようなものになりました。最初に人口の増加という目標を掲げました。
人口の増加なんて無理じゃないかというふうに思われるかもしれませんが、この人口の増加という話が出て来たのは町民検討委員を交えての話し合いの中からでてきました。4月20日に町づくり懇談会をやって1割位しか集まらなかったのですが、その時に言われたのは、お前たちの作った計画にはちっとも夢も希望もないと揶揄されました。それは職員が財政を見ながら作った計画ですからそれも致し方ない面もありますが、もっと夢のある計画を作らなければいけない、それには何かというとやっぱり人口です。人口が減っていきます、交付税が減っていきます、財政規模が減っていきます、それではしまいには無くなってしまうじゃないかと言うことをいわれました。人口なら人口でぴしっと大きな目標を作って、そこに施策を集中させていかなければならないと町民委員から厳しくいわれまして、それじゃあいれましょうということになり、1万3000人という目標を作りました。
 1万3000人はわかったが、どうやって増やすのだ、とにかく後継者を育成しよう、これだけの農地があるのだから当然後継者を毎年育成していけばそれなりに増えてくるだろう、もうひとつはIターンの積極的な受け入れ、さっきの新規就農もいますが、これからは団塊の世代が定年退職になりますが、そういう人達から津南町に来て住んでもらおうと、そういう施策が必要ではないか、そういうことをやりながら現在人口は1万2000人ちょっとですがそれを1万3000人にしようという計画です。何もしないでいれば人口は、どんどん減っていき平成29年には1万人を切ることが推計されています。それでは困るということで、とにかく施策は人口増を目指しながらやっていこうということです。
 そのためにはやはり産業の振興が必要だろうというのがその下です。基幹産業は農業だという話をしました。先程販売高が約50億円という話をしました、55億円ある販売額を10年後には70億にしよう、そういう施策を取り入れていこうということでいくつか書いてあります。津南町は作るのは上手ですが、売るのが非常に下手です。売り込みをもう少し考えていく必要があるだろうということです。
ここでは「津南こだわり農産株式会社」を作って津南の農産物を積極的に売りこもうということを考えています。それからもうひとつは食品加工です。よく農業の6次産業化ということが言われていますが、その一環として食品加工、今約20億円ありますが、これも10年後には35億円にしよう、あるいは後継者を育てるのに認定農業者、今177人いますがこれを240人に増やそうと計画をしています。
 二つ目の柱としては、やはり観光産業の育成をしていこうということです。
 三つ目としては雇用の創出、これも何としてもやらなければならないし、またこれをやることによって若者も定着をしてくるだろうということです。ただこれは非常に難しいです。簡単に企業誘致だといっても今企業はこないですし、それじゃ地元の企業家を育てようというようなこともここでは考えています。
右の上の方が、暮らしやすい町ということです。やはり産業の振興と暮らしやすい町これを堅持していく必要があります。充実した生活環境の町、当町の場合雪が降りますので、雪対策は非常に重要です、二つ目は健康で安心して暮らせる町、医療機関の充実です。三つ目の柱としては子供が生き生きと育つ町、子供がいるような町づくりをしないといけないということです。
 その下が、協働型社会を目指す町ということで、ここでは集落あるいは小学校単位に地域づくり協議会を作ろうと考えています。これは合併をするところでも地域づくり協議会というものがありますけれども、それの小さいものという考えかたです。今まではどちらかというと行政が町づくりを行なえということですので、これをいかに住民の皆さんと一緒にやるかというのが最大の課題です。ですからある程度小さい中で組織を作って自分たちのことは自分たちで考えよう、最終的にはそこがある程度自治組織になってくれるようなことを目指しています。また住民参加についても積極的に促していきたいと思っています。
 その下ですが、左のほうは住民の痛み、右のほうは行財政改革について書いてあります。
 3ページは、それぞれの地区でどんなふうになっているかという将来イメージが書いてあります。
 4ページからは、それぞれのチームで検討した内容が書いてあります。
 15ページの右側には、歳出削減に向けた取り組みということで、事務事業の点検については2ヵ年やってきましたが、これも引き続きやる必要があるだろうということです。一番の課題は、この報告書をつくることではないのです、これをいかに実現するかということこそ大事だと思います。その実現も、町の職員がやれやれじゃあダメなのです。住民をどうやって巻き込んでやっていくかということが大事になります。
1番下は計画の進行管理についてですが、これはしっかりと行ないたいと思っています。今考えているのは、これからは実施の段階ですから、いかに班長さんが率先してやっていくか、これは町づくりのひとつの方向性ですので、やり方はいろいろあると思います。あるいはもう少し詳しく考えて見れば、ちょっとこれは出来ないだろうというものも出てくるかもしれません。あるいは同じやるならこういうふうにやっていこうじゃないかと言うのもあるかもしれません。それをやるのはやはり班長さんですから、とにかく班長さんを中心にして、管理していく必要があるだろうと思います。班長さんだけではダメですから、11の町づくりの検討チームに住民代表が1名ずついますから、その代表も入れて、住民代表11名と班長が16名で合計27名でしっかり管理していく、ここでは自律計画管理委員会を設けてしっかりどこまで達成しているか、進ちょく状況の管理とこの計画はあくまでもひとつの方向性ですから来年度以降の見直しも当然必要です。また、事務事業の見直しもここでやっていきながら町民を巻き込んで今計画している内容が実現できるか、そこが津南町が自立できるか出来ないかの最大のポイントになるのかなと思いますし、それをきっちりやって初めて自律できる津南町ができあがると思っています。
 20ページを見ていただきますと、左の方には町づくり検討委員の名簿が書いてありますし、20ページの右側と21ページの左側は議会の議員さんの提言です。議員の方には、職員が主体となって町づくり懇談会に出たときに、議員は何をやっているのだ、議員の姿が全く見えてこないという意見がありました。それで、議員さんも二つの委員会がありますが、委員会ごとに提言をしてきた内容です。21ページの右の方からは津南中学校の3年生が総合学習の一環で津南町の町づくりを考えてみたいということで、117人の生徒がそれぞれ私どもと同じチームを作って町づくりの検討をしてきた提言の内容です。非常に子供らしい素直な提言といいますか、そういうものが出ています。こういうことに取り組んでいるということが私どもにとっても嬉しかったです。生徒からの提言について先週一人一人の生徒に回答を書いて中学校の先生に渡しました。先生から生徒に渡していただけるかなと思っています。
 1番最後がチームのメンバー表でして、全職員の名前を入れてあります。上の方黒く網かけしてありますが、これが町民代表の方で、5人ずつそれぞれ入っていただいて一緒に議論をしていただいたということです。
津南町の町づくりの特徴としては、緻密な財政シミュレーションです。これは将来推計ですからどういうやり方が正解というのはありませんが、款、項、目、節の節単位で積み上げてきたということで、一部分が変わってもそこだけ入力し直せば全部変わった数字になってきます。そんなやり方がひとつの特徴かなと思います。次は職員全員参加ということです。町づくりというと、プロジェクトチームを作って行ないますが、当町では職員全員参加で取り組みました。プロジェクトチームで作った計画というのは一般の職員にとっては、あの人たちが作った計画だというふうになってしまいます。しかし、職員全員参加によって誰の責任でもない職員全員の責任だということで、多少時間はかかりましたが、職員全員参加は大変よかったかなと私自身は思っています。それも全く超勤なしでやりましたので、頑張ってくれたと思いますし大変ありがたいなと思っています。
 4月の1日に人事異動があります。その時には職員全員集めて町長から自律計画へのねぎらいの言葉と、今年はちょうど町政施行50周年の節目の年でもありますし、自律計画元年という節目の年ですから、是非町長から訓示をいただきたいと思っています。津南町の計画もようやく始まったばかりで、これから本腰を入れて町づくりをしていかなければならないと思っています。自律してみたけれどやっぱりダメだったということにならないように気持ちを引き締めて頑張りたいと思っています。大変長時間に亘り津南町の町づくり計画について説明をさせていただきました。少しでも皆さんの参考になればと思っています。ご清聴有難うございました。


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