【第2回とちぎ地域・自治フォーラム概要】

第2回とちぎ地域・自治フォーラム開催

基調講演と4つの分科会で意見交える

2005年10月2日、とちぎ地域・自治研究所は、壬生町中央公民館で「構造改革とこれからの地域・自治を考える」をテーマに第二回とちぎ地域・自治フォーラムを開催しました。
午前の全体会では、金澤史男横浜国立大学教授が「三位一体改革とこれからの地方財政・自治制度」と題して基調講演、地方分権一括法から三位一体の改革に至る経緯、三位一体の改革が3兆円の財源委譲と引き換えに4.5兆円の国庫補助金と3兆円の地方交付税を削減するものであること、そして高額所得層への累進課税による財政再建の方向性などを示しました。(詳細については基調講演報告をご覧ください。)

 午後の分科会は、@介護保険制度の見直しと高齢者福祉、A安心して子どもを生み育てられる地域社会をめざして、B自立をめざす自治体づくり、C公民協働による地域活性化の4つに分かれ、研究所の理事などを助言者に、介護や医療、年金、子育て支援、市町村合併、自立への取り組み、地域活性化など、現場からの報告を交えて熱心に討論しました。
 当日は、久々の秋晴れの中50名が参加しました。


-----------------4つの分科会(午後) -----------------

第1分科会 介護保険制度の改正とこれからの高齢者福祉
 ■助言者 高橋紘一(国際医療福祉大学数授)
 ■報告者 槍山 正(全日本年金者組合栃木県本部委員長)
        小沢(栃木県保健医療生協常務理事)
        天谷(介護サービスセンター虹所長)
 ■司会者 野口(とちぎ地域・自治研究所理事)
 ■参加者 15名
 ■会議経過

○天谷(介護サービスセンター虹所長)
 約20人のデイサービスを行っているが、10月から食費が自己負担となり、月15〜16万円の介護報酬が入らなくなり、やむをえず。食費を420円から525円に値上げした。ショートステイも2840円から5700円程度に値上げされ困っている。現在、ホームヘルプも含め利用者は65人だが内約30人は要支援と要介護1であり、06年4月からは、予防給付にまわされてしまう可能性が大だが、予防給付の内容、介護報酬の発表が来年2月ということで、計画も予算もくめず困っている。自治体に弁当代補助などを働きかけたい。


〇野口(年金者組合栃木支部長)
年金者組合で栃木市交渉を行ったが、特養入所待機者の入所の見通しがないとの回答だった。また、ホームヘルパーも交通渋滞、ガソリン代高騰で因っている。また、1週間のショートステイでうつ状態になってしまった人もいる。


○荒川(宇都宮市議)
宇都宮市の特養待機者は700人余である。市では、介護保険法の改正により、審議会で見直しをしているが、委員からは業態の話しが出てこない。


○小沢(栃木県保険医寮生協常務)
診療報酬の引き下げ、高齢者の一部負担引き上げ、07年度計画されている新高齢者医療保険制度など、患者も医療機関も困っている。


○檜山年金者組合県本部委員長
年金改悪の実態と最低保障年金制度について説明。


○野口司会者
今日は、介護保険問題を中心に、高齢者医療制度、年金制度改正の実態と問題点が報告、討議されたが、高齢者団体を中心に介護・医療・年金関係者が対国、自治体交渉により、改善を図るよう働きかける事が必要です。



 第2分科会「安心して子どもを生み育てられる地域社会を目指して」

1.基調報告「『育ちの場』としての地域社会―子どもは親だけでは育たない―」
  (作新学院短期大学教授 伊達 悦子 氏)

まずはじめに、基調報告として作新学院短期大学教授の伊達先生より報告をいただいた。
現在の子育て環境、特にその親の置かれている状況として、@親になる前に子どもに関ったことがない、A三世代同居の減少や核家族の増加、B地域の中でのつながりが学校や職場以外にないなど、親の人間関係の広がりのなさが特徴としてあげられる。
また、子どもに関してもスクールカウンセリングの経験などから、偏差値でしか自分を評価することができず、自信や自尊心が弱いという現在の子ども像が見えてきた。しかし、子どもの育ちとは、いつ、誰と、どのような人間関係を経験するかが大きな要因であり、それを保障するのは親をはじめとする大人の責任である。不登校の子どもへの対応でも「学校へ行かなくてもいい」とう考え方から「なるべく学校へ行った方がいい」という考え方に最近変わってきた。また、子どもの発達には子どもを「待つ」ことを大人がしなければならないがそれをできていない現状がある。つまり、子ども自身には「育つ力」があるにもかかわらず、大人に「育てる力」がないという現状がある。
以上のことから子どもを育てられる地域社会をつくることが求められており、そのために地域の中でのネットワークづくりや地域社会の中の「資源」の発掘、開拓をする必要がある。

2.実際の現場からの報告
  報告者からの報告では、各分野から3名の方に報告をしていただいた。

○直井氏(中央児童相談所)からは、児童相談所の現状について、栃木県の児童福祉士の数が交付税の算定基準数に満たないことや、児童相談所の多忙化による「虐待初期対応相談所」に終始している状況を報告していただいた。


○大木氏(栃木市健康増進課)からは、栃木市の子育て支援施策について報告いただいた。育児支援家庭訪問事業では指導員が家庭に入り、これまでは口頭だけの指導であったものが、実際に一緒にやることで、より寄り添った子育て支援を行っていることや、福祉トータルサポートセンターを立ち上げ、従来の縦割り対応で窓口をたらいまわしにするのではなく、一括して対応できるようになってきていることなどが報告された。


○水沼氏(宇都宮市保育士)からは、公立保育所の現状や、母親の現状などを報告いただいた。1997年(平成9年)の児童福祉法の改正で保育所の選択性や定員、正規職員数などの最低規制の緩和、国公費負担の廃止などが盛り込まれ、保育所の現場が非常に大変な状況であることや、子どもを預ける親、特に母親が一人で子育ての全責任を負い、孤立した子育てをしており、心的不安も大きいという状況を報告いただいた。


 以上の報告後、参加者からも発言があり、今の学校や保育所では子どもや親が「お客様化」しており、職員が親にものを言えない状況や、個人情報保護法の施行に対する誤解や過剰な反応に対して混乱が起こっている状況など活発な意見交換を行うことができました。

 第3分科会「自立をめざす自治体づくり」
(一) 概要

 ■参加者 12名(事務局含む)
   那須塩原市、石橋町、南河内町、茂木町、都賀町、藤岡町、矢板市の議員、住民運動家の方々の参加

 ■コーディネーター 太田 正 作新学院大学教授

 ■進行
   最初に太田先生の基調報告を受けて、各参加者からの報告を頂き討議した。


(二) 太田先生の基調報告

 *自立と自律の定義。地域づくりの哲学を持つかどうか
 *自律に取り組む市町村事例の紹介
  〇 岐阜県 白川村 ―「合掌つくり」を売らない、貸さない、こわさないの「自然環境を守る会」を中心に保存運動で村を自律させる運動
  〇 長野県 栄村  ―自律の鍵は如何に住民が実践的に自治を発展させるか。
 *合併新法に基づく県の構想つくり段階に入り新しい局面
 *第28次地方制度審議会による道州制への国家再編シナリオ
 *コミュニティを起点とする「多様な自治」をめざして
    ―集落計画つくり(小国町、塩尻市の計画紹介)
    −地域審議会、地域自治区、合併特例区の活用


(
三)各地参加者からの報告

(1)全体として、平成合併の第一段階の終了直後だっただけに、その経過報告的な内容が多く、「合併してもしなくても」住民参加による自律した自治体つくりの取り組み報告という点では、「自律をめざす取り組みはこれから」と言う段階を反映しこの点での交流は少なかったといえる。時間の制約もあり、「自立をめざす多様な取り組みと実践報告交流」は今後に積み残す結果となった。

(2)参加者からの報告

*那須塩原市(高久議員)
   1月にスタート。人口11万人 牛乳本州1、全国で4番目。
   議員 62人が32人に
   住民投票条例要求、市長リコール活動を経て
   指定管理者制度の導入  161件中71件が外部委託
   ミニ市議会  15ヶ所開催


*下野市(石橋町 長嶺議員)
   石橋考える会−宇都宮との合併住民アンケート
    宇都宮との合併   3分の1
       〃   しない  3分の1
           3町合併 3分の1
    議会 反対4人  賛成13人
   今後の課題
    1 ゴミ処理  南河内、国分寺―小山市利用
            石橋     −宇都宮市利用
    2 特例債 120億円  新市庁舎建設、公債比率 20%を超える
    3 今後の住民参加のあり方


*下野市(国分寺町 阿部議員)
最初3町合併に賛成した。本当に3町合併で良いのかすり合わせをしていくうちにいろいろな課題が出てきた。最終的に住民投票で賛成となった。
合併に行くのに持参金は要らないと新規事業を含めて予算を組んだ。
市長選挙は、どこの町の町長が勝った、負けたとなるので旧町長は立候補すべきでないといっている。


*茂木町(大町町議)
    昨年6月に合併協議会から降りた。(町長の判断で)
    議会の判断は、状況によって降りる。
    検討委員会を設置(議員3人、学識者3人)
    ケーブルテレビで町民に放映。10数回の会議開催。
    6月に1000人の町民大会開催し意見を聴く。
    合併断念後、シミュレーションや自律に向けての説明会を4ヶ所で開催。


*都賀町(早乙女前町議)
 全国で最初に栃木市、小山市、都賀町の合併問題が起こり協議会が設置された。シンポジュウムを開き、協議会は凍結。
 その後、1市3町合併がおこり、都賀町では合併反対の町長おろしが行なわれた。


*藤岡町
    9月議会―合併しないと刺客を送られる。
    1人ではめしを食えないが2人なら食える。
    財政が苦しいというが議員は厳しさの内容を知らない。
    問題の解決をすべて合併で解決できると合併に持ち込む。


*矢板市(山口さん)
    塩谷町と合併しない。合併しないのでお金がないと議員定数削減した。(22名を16名に)


(3)最後に、次の2点を確認し散会した。
  1 「自立をめざす自治体つくりネートワーク」の開催を確認
  2 2006年1月より開催予定の第4期自治講座へ参加の確認

 第4分科会「公民協働による地域活性化」

 3名の方から、それぞれの地域・地区での官民協働の取り組みの事例の報告を頂きました。

最初の事例は、まちづくりに取り組んでいる宇都宮大学の陣内雄次助教授から、とちぎ市民まちづくり研究所の「空き店舗を利用した地域の縁側づくり」と題して報告がありました。
「栃木に住んでよかったなー」と実感できる官民協働の持続可能なコミュニテイ作りを目指し、市民をはじめNPO・教育関係者・行政・コンサルタントなど多様な人々が個人のと立場で責任において参画し、まちづくりについて学習・研究・情報発信を行なう場所の縁側、都市部における空き家を利用してのユニークなまちづくりシステムと研究所の実践の報告と、これから退職を迎える経験豊かな団塊の世代に、退職後地域に入ってまちづくりに参加して力を発揮していただくことの必要性についての提案がありました。
具体的な取り組みは、趣旨に賛同した市民から宇都宮大学前の空き店舗を無償で借用(市内の空き店舗を借用しようとしたら家賃20万円と高いので)して、研究所のメンバーが主体となって手作りで改修をし、今年の1月に学生等コミュニテイビジネス支援施設「そのよこ」をオープンした。
開設後は、学生や市民グループが日替わりで運営をする。教育学部学生たちによる起業実行委員会のカフエ「蓮家」は、日曜日の午後5時から9時まで営業、これまで学んできたことを生かして、環境配慮型経営に気を使い実践している。学生と市民が協力して子供の居場所【駄菓子家・飴ん坊】の運営、また市民の手による「ミニ朝市」・「とちぎ市民文庫TECIO」、陣内代表がまちづくりに関する相談(無料)に乗る「まちづくりカフエCommon」は、金曜日の夜6時から9時まで予約制で開いている。その他、「こども委員会」・「とちぎの子供とまちを考える会」・「コドモネット・らくだーず」・「職と環境と次世代を考える市民の会」等、みんなで協力、分担してまちづくり「地域の縁側」を目指しています。今どこの市、町でも「シャッター通り」が目立ちます。この取り組みは、各地域の今後の基本的なまちづくりの参考になる報告でした。


2番目の報告は、「都市住民との交流をすすめる地域ぐるみのむらづくり」の取り組みを民宿たばたの支配人関戸良一氏から報告がありました。
自然と人と人とのつながりを大切にしたむらづくり「烏生田ちくむらづくり協議会」は、平成10年に「梅の木のオーナー制」を取り入れ、今年も関東近県から154人のオーナーが四季折々に地域の人と交流(年4回)しています。
むらづくり協議会の具体的な取り組みは集落の27戸で構成し、過疎化・高齢化が進む中山間地で遊休農地を利用し育てた梅木を活用し梅の加工、販売の取り組み、又地域資源である竹林を利用した竹の子掘りのイヴェントや高齢者による竹細工教室、棚田の保全などによる農村景観作りに取り組み都市住民との交流進め、地域の活性化を図っている。
また、モータースポーツ・ツインリンクの自然活用の「ハローウッズ」や、グリーンツーリズムの民宿「たばた」や、ほかのむらづくりとも連携して、地域づくりをすすめている。協議会には、5部門で梅干をはじめ、カリカリ梅、梅ジャム、ジュース作りを県の振興課や町の農林課の協力を受けて研究し、現在カリカリうめ・ジュースなどいくつかの製品を販売している。
オーナーは、中高年が多い。またリピーターもかなり多くマスコミをうまく利用して呼びかけている。その中のオーナーの1人のお医者さんがこの地区に開業したい、老人介護施設を作りたいと言うことになって、小学校跡地に患者100名の入所施設ができ、そこで若い看護士さんたち約100名が働いています。このように、自然を生かした、人とひととのつながりを大切にした地域づくりは定着しつつあります。
また茂木町には、ほかに12のむらづくりの組織があり次々に生まれつつある。、それぞれがゆず、そば、しいたけ等地域の特性を生かした取り組みをしています。
それらの点と点が結ばれて地域づくりが面となって発展できるよう今後の取り組みを期待したいと思います。


3人目の報告は、10月1日に合併した新市那須烏山市の平塚英教市議から、新たな企業の創出・育成を図りながらの街づくり「ベンチャープラザ烏山企業化支援」について報告がありました。
烏山は、古くは城下町で和紙作り、那珂川を利用して江戸との貿易も盛んな町であった。明治大正も産業は盛んであった。
しかし、近年物作りの状況が変化して、企業倒産、工場縮小、海外転出等、企業が烏山から撤退し危機的な状況が生まれました。昭和52年に烏山商工会により発足した機械化研究会の工業進行支援策や栃木県商工連合会の推進している企業力ランクアップ事業に取り組んできました。それでも企業の撤退が相次ぎました。そこで町と商工会が力を合わせ、平成14年烏山町企業化支援センター開設委員会立ち上げ、15年に県から施設整備費600万円補助受け、元専売所の事務所の跡地を町が買収し商工会が整備、「ベンチャープラザ烏山」をオープンした。
事業の内容は烏山周辺で新たに事業を始める人に、創業後5年未満の方々、新しい分野を目指す方に事業場を安い料金で一定期間貸与、また産学官等の専門家による経営、技術の支援、指導、専門家の派遣を行うことで、企業の創出・育成を図っている。
貸しオフィス9室は施設運営費として3分の2を負担していただき、現在満室。相談は多い日で9件。いままでの入居企業の1社は県技術センターと宇都宮大学農学部と共同研究し特許取得をして「健康食品」として販売している。また、家庭用洗剤の開発、インバーターの計測技術の製品開発、特殊絵の具の開発、その他入居者数社共同で医療福祉機器の開発に取組むなど注目を集めている。このように「ベンチャープラザ烏山」の取り組みは、烏山における企業の発展に大きく寄与し今後益々期待されている。

-------------------------まとめ -------------------------

  最後に各分科の報告が手短に行われ、参加者は、各分科会の内容を共有し散会しました。


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